KYUTO SITU CHAT 今日の茶うけバナシ「坂本龍一の新作『CHAZM』をめぐって」
-- sasaki sasaqi:1週間ほど熱を出しゲホゲホいっていたら、「具合悪い」と言い出す編集部員が続出。私は佐々菌などと呼ばれ蔑まれる日々です。 motoshuku motoshuku:宮崎あおい主演の『ケータイ刑事』DVD-BOXを買おうか買うまいか考え中。そういうことを考えるのは、たいてい体調が悪い時なのだ。 --
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ジャケット写真
 
motoshuku(以下、m): 俺もここまで来たんだなあと思ったよ。
sasaqi(以下、s): なにがですか。なに登りつめちゃったんですか。
m: いや、坂本龍一大先生にお会いできたじゃないですか。取材できたじゃないですか。
s: それはもう僕も大感激でしたよ。でも僕の場合、出会い頭の事故っていうか、登りつめた感はないですよ。でもとにかく、中学生の頃から憧れていた大先生に会えて、とにかく大感激です!
m:取材では、とにかく興味深くて面白い話をしてくれて、しかもクールで大人で魅力的で。俺も小学生の頃から教授がヒーローなので、それで、俺もここまで来たんだなあ、と思った次第ですよ。取材前は興奮で鼻血出したし。
s: 帰りの銀座線で頭ぼ〜っとしてましたよ僕は。しかもですよ、あれってばクリスマスでしたよね!
m: そうそう。最高の年の瀬だったよ。しかも教授の新作『CHASM』を一足先に聴かせてもらったわけだけど、これがまたすごいじゃないですか。
s: やばいですよ。何から話していいかわからないくらいですよ(オロオロ)
m: ついていけないくらいに前を走る、時代の先頭走者としての坂本龍一がいるじゃないですか!
s: 教授のオリジナル・ソロワークスとしては9年ぶりの新作、つまり『Smoochy』以来になるわけですが、見事に坂本ソロワークスの系譜の最先端たる傑作ですよ!
m: アルバムの先行シングル「undercooled/Ngo」を聴いたときは面食らったけどね。最初はポップな印象なんだけど、これまでの作品とは聴き方が違う感じがする。「undercooled」は、いきなりメロディが始まって、いつのまにか展開していって、いつのまにか終わる。「Ngo」は、これまでありそうでない変形ボッサで、これも難しい味わい。でも両方とも、聴けば聴くほどに、快感が沸いてくる。『エスペラント』とか『千のナイフ』あたりの味わいに近い感じがする。
s: ぱっと聴きのポップさとは裏腹に、ひとつひとつの音がとても繊細に作りまれているのが印象的でした。いいスピーカーで大音量で聴くと、さらに楽しめるって感じで。最初は違和感が強かった韓国語のRAPも、なんとまあカッコいいこと!
m: そう、MC.SniperのRAP、とても美しいんだよね。で、『CHASM』なんだけど…
s: いい意味で期待を裏切られました。もっとポップなんだと思ってたんですよ。『音楽図鑑』のようなアルバムだ、という評判も漏れ聞いていたし。でも実際には『B-2 UNIT』にむしろ近い感じで、実験的で挑発的で、でも美しくって。
m: 一聴してポップじゃないんだけど、めぐりめぐって、結果ポップじゃない?
s: そうなんですよね。90年代半ばに、NHKの番組「土曜ソリトン サイドB」に教授が出演した時に「ドリス・デイの歌とスヌープ・ドッグのRAPと、どっちがメロディアスか」という問いを発していたんですよ。つまり、ポップスとは、ポップとはなんぞやという問いだと思うんですけど……なんかグダグタ言いましたが、いやあ、ポップですわ。このアルバム。
m: なんだよそれ。
s: 僕はてっきり、歌ものが増えると思ってたんです。それはここ数年のBossa的活動から考えても。それというのも、前作『Smoochy』にはジョビン(アントニオ・カルロス・ジョビン)に捧げるオマージュみたいな側面もあって、これまでよりも精力的に歌ものが収録されていたと思うんですね。だから、ジョビンにつかりきったここ数年の活動でさらに歌ものが増えるのでは? と思ってたんですが、そうじゃなかった。同じジョビンでも後期のジョビンのような高尚な趣があるというか…
m: そうだねえ。ポップっていうか、なんか、ものすごく大人なエレクトロニカというか。後味がいいテクノというか。そうなると、ジョビンに近くなる、のかな。
s: ああ、それ!
m: ミニマリズム、ってやつですね。教授の現代音楽的なセンスが、現在の技術を媒体として、活きている、といいますか。なんか、YMO時代の教授の話してるみたいだけど。
s: それこそ絵の具で描くように、重たいAudioファイルを直接編集できるようになった、と考えて良いんでしょうかね。感性とテクノロジーが高度に融合してるって感じです。
m: 80年代なら“時代が教授に追いついた!”っていう帯コピーがつきますか。でも「undercooled/Ngo」が心地いいので、彼女とワイン飲みつつ、バスローブで聴こうかな、と思いきや、2曲目の「coro」でまたびびると。最初聴いたときは、ジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)のアメリカ国家を思い出しました。
 
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  s: 僕はエイフェックス・ツインのような激しさ! と思ったんですけど、なんか湿った温もりのようなものがあって、それがよかったですね。僕は特に好きだったのが3曲目の「War&Peace」なんですけど、スティーブ・ライヒが『THE CAVE』というオペラで試みた、人の話し声のサンプリングでメロディーを構築する、という手法がより洗練されて、よりダイナミックに、ポップに再構築されていて大変感激しました。
m: 最初は『Sweet Revenge』とか『Smoochy』の頃にありそうな曲だなあと思ったんだけど、細部を聴いていくと、全然違いますな。テーマも含めて、考えるところ・味わうところの多い曲です。
s: 『CHASM』って、タイトルリストだけみると、この曲はシングル、この曲はどこどこに提供した曲、なんて感じで非常にバラバラな印象を受けるんですけど、全体を通して聴くと坂本トーンで貫かれていて、心地よい統一感があるんですよね。そしてほどよくばらばらで。
m: 全体の流れもいいです。耳が鋭敏になったところで、デヴィシル(デヴィッド・シルヴィアン)様の極深ヴェルヴェット・ヴォイスがヴワンと始まるあたり、たまりませんし。
s: 「World Citizen/re-cycled」ですよね! とろろ〜んってなりますもんね。
m: うん。鋭敏、って言いましたけど、このアルバムはとても心地良いと同時に、耳と感性を鍛えてくれる作品のような気がしますね。ちょうど、思春期に教授のアルバム群を後追いで聴いて、とんでもなく感銘を受けた時のような感慨を、30代目前にして感じております。聴いたことが無い音・フレーズが詰まっている未来系の音楽にもトキメキますけど、この作品は、未来のものなのに熟成している、なんとも言いようが無い魅力がある。本当にやられました。すごいっす。
s: テクノロジーとアナログの魅力の間のバランスのとり方って、現代のミュージシャンの一つの課題みたいなところだと思うんですよね。でも、そういうことをそれこそずっとやってきたYMOの3人が、今回の『CHASM』でいろいろとタッグを組んでるってのも聴きどころじゃないですか。
m: だね。3人仲良さそうで、大変けっこうです。でも、確かに今回、テクノロジーバリバリで作られたアルバムなのに、アナログな感触を感じるね。素材が活きていて、その素材自体を楽しむことも出来る。
s: 篳篥(ヒチリキ)でてくるじゃないですか。
m: いい音です。
s: ちょっとびっくりするんだけど、なじんでるんですよね。
m: あと、コーネリアス氏のギターが効いてるよね。非常に贅沢な素材の使い方なんですが。
s: アルバム全体にわたってすごく。レコーディング中に2人が盛り上がったみたいな話も漏れ聞くんですが、一体どんな光景だったのか、とても興味があります。
m: でも、コーネリアスのギタリストとしての側面にスポットライトを当てるって、すごくない? 高級マグロの目玉だけ食べるみたいな。
s: 確かに。でも、指先のうまさでなはなく、耳の良さがあらわれる彼のギタープレイが、なんかぴったりはまってますよね。
m: ほんとに。こちらも大きな聴きどころです。というわけで、みなさん聴きましょう『CHASM』。80年代に追っかけだった人も、「energy flow」で初めて知った、という人にも聴いてほしいですね。っていうか、みんなの感想が聞きたいですね。
s: ちなみにですね、『CASA』から入っていったファンも多いと聞きますので、そんな人にも、もちろんお勧めです。
m: 教授のアルバム全部聴いてる人でも、驚くよね、きっと。
s: 驚きますよ。そんで「いよっ!まってましたっ!」という感じかもしれないです。
m: とにかく私は、感動のあまり、new balanceのスニーカー買いました。最高のCM効果ですね。
s: 私の家にはいまだ冷蔵庫がないんですが、そのせいか、一日たったペットボトルのお茶は“冷やしたりない”んですよね。ま、それだけなんですけど。
 
<終了>
 

 
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坂本龍一
 
坂本龍一からのコメント
新作について、また自身の健康についてなど、17分間にわたって饒舌に語ってくれた、貴重な内容の映像です。
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